このコーヒーの生産地は、エチオピア南部にあるゲデオ県のイルガチェフェに位置するハルスケ村です。この村には、約400世帯のコーヒー農家さんがいます。2ヘクタールほどの土地を所有し、その中に住居と農園があり、この地域ではセミフォレストコーヒーと呼ばれるような規模感の農家さんが多くいる地域です。
エチオピアの栽培方法でよく耳にするガーデンコーヒーは、自宅の庭にほかの農作物とともにコーヒーを栽培する方法のこと。また、完全に人の手が入っていない、野生の森で育ったコーヒーを収穫する方法がフォレストコーヒーと呼ばれます。セミフォレストコーヒーは、自然林のなかにコーヒーの木が植わっている状態ですが、雑草を取ったり、日があたるように周りの木を切ったり、必要なところには手を加えつつ、なるべく自然に近い環境で育てる方法です。
傘みたいなコーヒーの木
この地でよく見かけるのが、まるで傘を広げているかのように、枝が広がっているコーヒーの木です。通常、幹は1本ですが、カットバックといわれる若返りの剪定方法を行うことで新たに数本の幹を伸ばしたり、幹が自身の重みで曲がり、そこから生えてくる側枝を成長させて数本の幹にしたりすることがあります。地上から1メートルほどの枝は落とされ、樹上部分のみにチェリーが実っているのです。
そんなコーヒーの木の姿をよく見かけることがあり、この地では昔からそうやってコーヒーが栽培されてきたのだろうと思わされます。
プリムローズ社の存在
今回ハルスケ村のコーヒーを取りまとめてくださったのは現地のプリムローズ社です。環境や社会、コミュニティ経済にも目を向け、ただコーヒーチェリーを購入し、輸出を取りまとめるだけではなく、それぞれの地域の農家さんのニーズにあったサポートを継続的に行なっています。2012年に設立された会社で、イルガチェフェをはじめ、グジやシダモ、リム、レケンプティ、ハラーなど、広くエチオピア国内の産地につながりをもっています。
ハルスケ村のコーヒーの一番の特徴は、ナチュラルでありながらクリーンな後味です。この特徴を作り出すのがプリムローズ社の徹底した品質管理です。農家さんたちは、一つひとつ手作業で収穫した完熟したチェリーを、その日のうちにプリムローズ社のウォッシングステーションに持ち込みます。持ち込まれた日ごとにロット管理され、アフリカンベッドで丁寧に乾燥させていきます。この間も手間を惜しまず丁寧にハンドピックをして未成熟の豆を取り除くことで、この透明感のある後味のコーヒーに仕上がるのです。